はじめに —— 「資源の話」として読まないでください
中国のレアアース輸出管理については、この一年、さまざまな角度から報じられてきました。ただ、その多くは国家間の動きや価格の話であり、発注者の実務に落ちてきている記事は多くありません。
本稿では、サーボモータ、アクチュエータ、ポンプ、各種センサ、ロボット関節など、磁石を含む部品を扱う調達担当者が、この週のうちに確認できることを整理します。
予測はしません。11月11日以降に何が起きるかは、関係当局以外には分かりません。ここでは、公表された時系列と、書面で確認すべき項目だけを扱います。
1. まず、時系列を正確に
2025年10月9日、中国の商務部と海関総署は、以下の六件の公告をまとめて発出しました。
| 公告 | 対象 |
|---|---|
| 第55号 | 超硬材料 |
| 第56号 | レアアースの製造設備・原輔材料の一部 |
| 第57号 | ホルミウム、エルビウム、ツリウム、ユウロピウム、イッテルビウムなど中重希土類5種 |
| 第58号 | リチウム電池および人造黒鉛負極材 |
| 第61号 | 中国外の関連レアアース品目 |
| 第62号 | 採掘、分離・精製、金属精錬、磁石製造、二次資源回収に関する技術 |
その後、2025年11月7日の第70号公告により、これら六件は 2026年11月10日まで適用を停止 されました。
ここから導かれることが二点あります。
第一に、停止は取消ではないということ。効力は保たれており、停止期間満了後に自動的に継続されるわけでもありません。
第二に、期限は公告の文言の中に書かれているということです。これは、実務上、担当者が根拠にできる唯一の種類の情報です。
2. なぜ今、三つの日付が並んでいるのか
混乱の多くはここにあります。整理します。
(1) 2026年11月10日 —— 第70号公告に書かれた停止期限。現行の法的文言です。
(2) 2027年1月10日 —— 2026年9月下旬の商務部の説明において、双方が「互暫停」措置をこの日まで延長することで合意したと、商品データ事業者が伝えています。ただし、第70号公告の日付を改める公告は確認されていません。「合意」と「公告の改正」は別の段階です。
(3) 2026年10月9日 —— 中欧貿易投資協議メカニズム第2回会合の共同声明。16項目の成果の中で、欧州向けのレアアースおよび永久磁石の輸出許可について、中国側が「グリーンチャネル」による円滑化を継続する用意があると記されました。
三つ目は地域限定の円滑化であり、期限の延長でも、全世界への措置でもありません。
実務上の扱いは次のとおりです。手配の上では 11月10日を基準にする。残り二つは”意向”として追跡する。そして、実際に日程を確定させる前に、必ず一次の公告を確認し直す。
3. なぜモータなのか —— 工程側の理由
ネオジム・鉄・ホウ素(NdFeB)磁石は、温度が上がると磁力が低下します。これを防ぐために、合金にジスプロシウム(Dy)とテルビウム(Tb)を添加します。使用温度が高いほど、添加量は増えます。
工業用サーボモータ、ロボットの関節アクチュエータ、連続運転のポンプ類は、高温・連続トルクの条件で使われます。つまり、磁力保持のための重希土類添加を、簡単には減らせない用途です。
したがって、仮に代替を検討する場合、それは購買の変更ではなく設計の再評価になります。
配合を変えれば、負荷率や温度サイクルを含む使用条件の全体について、保持力を実証し直す必要があります。フェライト等への置換は、同じ出力を得るために体格が大きくなり、重量とスペースに跳ね返ります。いずれにしても、ベンチ試験・耐久試験・図面更新を伴う認証プロジェクトであり、所要期間は数週間ではなく数か月の単位になります。
日本市場については、各種報道で磁石材料の供給逼迫が伝えられる一方、輸入総量には大きな変化がなく、変化は特定の中重希土類に集中しているとする調査結果(第一生命経済研究所、日本の貿易統計に基づく)もあります。つまり、影響は一律ではなく、品目ごとの確認が前提になります。
4. 今週のうちに確認できる三つのこと
(1) グレードで答えてもらう
磁石を含む部品ごとに、NdFeB のグレードと耐熱等級(標準的な等級記号の末尾区分で示されます)、材料申告書を書面で依頼します。「適合しています」という口頭回答ではなく、グレードで確認します。適用関係の判定は、供給側の輸出管理担当または自社の専門家が、公表された正式な管理リストに照らして行うものであり、営業窓口が即答できる性質のものではありません。
(2) 日付をまたぐ品番を洗い出す
現行の生産リードタイムと実出荷予定日を足し、工場出荷日が 11月10日をまたぐ品番を列挙します。多くの場合、数えてみて初めて実感される分量になります。
(3) 申請主体と対象範囲を文書化する
誰がいつ、どの仕向け地に対する輸出許可を申請するのか。さらに、その許可が予備品・交換部品・将来の追加発注を対象としているかどうかを確認します。単発出荷のみを対象とする場合、次回発注で同じ手続きが発生します。
5. むしろ注意したいのは、三か月後の「提案」
今回お伝えしたいのは、制度そのものよりも、次の一点です。
数か月後、供給側から「同じ品番のままで価格が下がります」という提案が来ることがあります。そのときに、磁石グレードが変わっていないかを確認する習慣を持っているかどうか。
性能表の上では同じ品番でも、内部の材料構成が変わっていれば、耐久や温度特性は変わります。確認は、書面で。
おわりに
香港に本社を置き、深圳に調達拠点を持つ私たちは、中国の工場で、中国語で、こうした確認を行い、書面で回答を取ることを日常業務としています。
品番と現行の磁石グレードをお送りいただければ、追うべき論点があるかどうかを正直にお伝えします。追う必要がないと判断した場合も、そのようにお伝えします。
(お問い合わせはこちら → https://tongsourcing.com/contact-us/)
